脱SEして文筆家になった人

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脱SEして文筆家になった人

四ツ葉真生(よつば まお)の過去ログ。twitter共に不定期更新。

忘れられない光景


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Self Review

所属同人の指定テーマ作品。

どこかへ旅した、ここが印象に残った。

といったようなありがちな文章にはしたくなかったので、ややひねくれた見方で書いたものだ。

個人的には好みの構成になっている。

ただ、テーマに沿って指定枚数で書き上げるのは意外に難しかった。

長くなりがちな私の文体をタイトに。

その練習のきっかけになった文章。

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忘れられない光景

さかのぼること二十年以上前のことだろうか。幼い僕は、家の近くの土手を歩いていた。

街灯の無いはずの夜道を煌々と照らす明るさに、ふと空を見るとそこには、とてつもなく大きな月が輝いている。

それはもう日常見るレベルの大きさではなく、それこそすぐそこで手に掴めそうなぐらい近くに見え、テニスコートがすっぽり収まってしまう位の巨大なサイズだった。

今考えれば、そこまで月が大きく見えた理由は十分説明が付く。いわゆる錯覚だ。月というものは地平線に近ければ近いほど大きく見えると言われている。

しかも世の中にはアリス症候群なんて言葉もある。不思議の国のアリスのように、小さいはずのものが大きく感じてしまう現象だ。

だが、こんな経験は誰しもあるのではないだろうか。例えば幼い頃は、大人達がとてつもなく大きく見えた。存在感としてではなく、物理的にだ。でもいざ自分が成長してみて気付くのは、幼き日に見た大きな大人は身の回りのどこにも居ないということだ。

僕には今、二歳になる甥がいる。もう少し時が経って、人や物を認識するという力が強まれば、きっと彼にとって周りの世界はとても大きな物ばかりに感じることだろう。

僕もその大きな世界の大人の一人なわけだが、彼にとって物理的にだけでなく、大きな存在の誇れるような大人になれるだろうか。

小さい頃に大きな大きな月を見て、その圧倒的な印象を鮮明に今でも心に刻み込んでいるように、僕も彼にとって心にいつまでも残るような大きな大きな大人になっていたい。

どこかの忘れられない光景を時々思い出すだけでなく、自分自身が誰かの忘れられない光景の一部になれるように、僕は道を歩んで行くつもりだ。

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