よつまお

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ミートミール危険論とプレミアムフード至上主義を考える

はじめに。

この記事は、原材料にこだわったプレミアムフードを推奨する内容ではなく、むしろその逆に、一般に使われるいわゆる「ミートミール」をはじめとして、普通食に対してあまり神経質になりすぎる必要は無い、といったスタンスの内容。

 

なので、今後プレミアム系フードの導入に迷っているかたへ、市販の一般品がネット上や巷の一部でセンセーショナルにやり玉に挙げられ、完全な悪玉かのような見方は実際のところ全く公平ではない、という情報として参考にしていただければ幸い。

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あえて対立構造的なタイトルにはなってるけれど、批判対象は「悪意的なプレミアムフード販促者」に対してのみであって、既にそういった高品質フードをこよなく愛用している方々は、是非そのままお使いいただければと。

 

今回は、なぜ必要以上に一般食の原料が悪者とされがちなのか、そんなゼロリスクを至上とする「危険論」「害悪論」のどこがおかしいのか、その背景に関しても扱っていくよ。

 

プレミアムフードとは

まず先に、プレミアムフードの方を簡単に定義しておこう。

 

一般的にはオーガニックな原材料やその産地にこだわり、栄養価が高く、合成保存料や着色料、化学的な酸化防止剤等の添加物が含まれていないもの、となる。

 

昨今ではそういった無添加かつ、自然由来の天然健康成分も付加したり、アレルギーに配慮してグレインフリー、グルテンフリー、そしてヒューマングレードとしてヒトでも食用されるレベルの原材料を使ったものも数多くあるね。

 

欧州産などのキャットフードやドッグフードの多くは、品質検査を独自機関に委託などしてそのクオリティを保っているわけ。

 

ヒトの赤ちゃんや子供に対しても、いまやそういった点に気遣うことが流行になっているから、愛すべきペットに対してもこだわりたいという需要が人気を博すのは、ある意味で当然の流れとも言えるかな。

 

ミートミールとは

対するミートミール。いよいよ本題に入っていくよ。

 

一般的に出回っているペットフードのパッケージ裏面などで、原材料を見て頂ければ、ほとんどの商品でこの「ミートミール」の表記があると思うけど。

 

これを一言で説明しておくと、ヒトで言うところの「ひき肉」だと考えてもらえれば。

 

ただしもちろん動物用なので、原料としては肉そのものだけではなく、毛や皮、内臓の残留物、排泄物などを「除いた」部分が粉砕されてミンチになっているもの。

 

こう書くと、確かに何が混ざっているか分からない、という不安に繋がりがちなんだけど、問題なのは、これを必要以上にキケン!と煽る人たちの言い回しの方。

 

このミートミール危険論は意外に古く、例えば2015年辺りからはネットやSNS上では以下のような文言が拡散されたりもしたんだよね。

 

いわゆる「4Dミート」論

ミートミールへの不安から、「4Dミート」という単語の登場。

 

この「4D」とは、死骸(Dead)病気(Diseased)死にかけ(Dying)障害(Disabled)の総称、とされていた。

 

つまり粗悪品の肉であると言いたいようだ。

 

また、この危険論をブログなどに書いている方々の多くの記事では、以下のような説明も散見されたね。

 

>>人間が食べられないようなゴミ同然の肉であったり、フンや骨も、内臓も全て砕いて混ぜ、さらには危険な薬品で消毒し、それをごまかすために添加物も大量に入れられている。

 

ここまで書くと、さすがに理性的な人であれば煽りすぎだろうと気づくと思う。
(前述の通り、もし糞尿なんて混入してしまったら、そもそもミートミールとして扱えん。)

 

ここでひとまず結論として先に書いておくと、これはアメリカ発の都市伝説が初出。これは後述。

 

さらにこの噂には尾ひれがつき、cuttingというヒト用の最低限の品質, other useの畜産用, grade D(3D)の廃肉, そして4Dまでもが、なんと「アメリカのUSDA(米国農務省)」で規格されている、というわけ。

 

ここでお肉好きのかたは気づくと思うけれど、USDAが認証していて国内で見かけるのは一般的にPrime, Choice, Select。

 

その下は、Utility, Cutter, Cannerと続く。

これは加工肉やペットフードにも使用される。だけどいわゆる「D」はそもそも存在すらしないわけよ。
(おそらく日本で言うA5ランクなどの食肉イメージから、アルファベットでDが粗悪と想像しやすかったんだろう) 

 

また米国では肉の「検査には義務」があるけれど、品質「等級付けは任意」。一体誰が好きこのんで、粗悪品のランクを認証してもらいたいんだろうね?

 

これは実際にUSDAのサイトへ行って確認していただければ自明なんだけど、もちろん3Dや4Dの表記は一切存在しない。
(ただし、いわゆる陰謀論者はそれが裏に隠されているだけだ、と表現する。)

 

つまり、完全に大嘘なのよ。

だけどこういった言論のせいで、ミートミールは必要以上に貶められた。

 

そして上記ほど酷くなくマイルドな言い回しであったとしても、出典や根拠薄弱な言いがかりで、まるでミートミール含有品を粗悪品かのように「プレミアムフード推奨派」が語ることがしばしばある。

 

このような一度ついた悪いイメージを払しょくするのは、きわめて困難なのは想像に難くないはず。

 

純粋にプレミアムフードを愛する人々は良いとして、売る側や薦める側が半ば意図的に他方を貶める販売戦略を取るのは、端的に「フェアではない」と思う。

 

むしろミートミールで作られたフードの本質とは、均一な品質で、それを効率よく製造し、安価に提供するための企業努力。

 

もし品質が一定で安価なフードがなくなれば、保護ネコ活動をボランティアでやっている方々の経済状況は火の車だよね。

 

もちろん高価なモノがより良いもの、という価値観は否定はしないし、ペットには出来るだけこだわりのあるものを食べさせたい、という個人の考えも理解はできる。

 

しかしミートミールが粗悪である、という言論はあまりにも行き過ぎで、過剰であると言わざるを得えない。

 

なぜ都市伝説が生まれたか

ではなぜ、上記のような風評被害ともいえる「ミートミール都市伝説」が広まったのか。

 

この初出は先に書いた通り、アメリカでの噂話が発祥。

 

例えば「マクドナルドのパティにはミミズの肉が使われている」という、いわゆる「ミミズバーガー」のウワサを耳にしたことはないだろうか。

 

これは日本で1980年代から90年代に流行った都市伝説だよね。

 

同じような構造の話が、2000年代にアメリカのタコス等のフードチェーン「タコベル」に対してネット上で起こった。


内容は、タコベルは粗悪な「グレードD」の食肉を提供している、といったもの。

 

もちろんこれも完全な言いがかりの都市伝説なんだけど、実は更に元ネタがあって。

 

時代は遡り、古くは1980年代にアメリカで「グレードD」の食肉がファストフードチェーン、刑務所、さらには学食で出されているという話を聞いたという人もいる。

 

つまり日本と同様に、SNSどころかネット環境すら怪しかった時代に、アメリカの学生たちが言い出した噂話なのよ。

 

アメリカでネット環境の普及率が50%を超えたのは、2000年代はじめで、それとほぼ同時期にこの「タコベル」の都市伝説が広まった。

 

そして日本では、LINEやFBはじめSNS全般の利用率が50%を超え始めたのは2013年頃から。

10代20代の若者かつtwitterに絞ると利用率50%を超え始めたのは、2014年頃から。

 

また冒頭で言及した通り、国内で4Dミート論を多く目にするようになったのは2015年頃。

さて、これらの時期の一致は偶然ではないでしょ。

 

要するに、ネットやSNSといったツールの登場によって、かつての口伝えの都市伝説がアレンジされ、リバイバルして危険神話となっているにすぎないわけ。

 

むしろ、アメリカでは2000年代にとっくに否定されていた都市伝説を、日本では世代を経てものすごい「周回遅れ」でミートミール危険論を展開して批判していたということになる。

 

万が一、上記のような粗悪な3D/4Dミートが本当にヒトやペットに使用されていたとしようか。

 

ただここで考えなければならないのは、日本はまだしもアメリカは「訴訟大国」であるということ。

 

人口は日本が約1億3千万人に対し、アメリカが3億3千万人でおよそ日本の2.5倍程度。

一方で、弁護士の数は日本4万人に対し、アメリカは約130万人でおよそ日本の32倍。

 

また、民事裁判の件数だけを比較しても、アメリカは日本の8倍以上にも及ぶ。

つまり、いつでも訴えたい放題な状況なわけだけど、なぜタコベルは今も倒産せずに存続し、ミートミールも存在しているのか。

 

こういったことからも、過剰なウソである、ということが分かってくるはず。

 

ここまでのソースは、ぜひご自身の手で「英語の原典」を検索してみてほしい。

 

ただ目の前を流れてくる日本語の危険論ブログ記事ばかりでは、事の裏側に迫ることは難しいと思うよ。

 

ナチュラル志向の是非

上記までで記事本編はおしまい。

 

あとはいわゆる過剰な「自然派」「天然由来」志向にも、少し警鐘を鳴らしておこう。

 

ここからはすごく長い完全な蛇足となるけれど、あわせてご興味のあるかたはお付き合いいただければ。

 

昨今ではSDGsの流行もあり、かねてからのヘルシー志向やエコ志向と相まって、天然であること・自然であることが、イコール「良いモノ」だ、という風潮があるよね。

 

前述の通り、プレミアムフードでも「オーガニックの」「天然由来の」「植物由来の」「化学合成○○不使用」などのキャッチコピーは多く目にする。

 

先に結論めいたことを書けば、もし少しでも科学に興味がある人であれば、「自然や植物」のほうがよっぽど毒や害がありふれていて、「ありのまま」のほうがよっぽど「自然ではない」ということに気づくはず。 

 

オーガニック信仰

このオーガニックについては、ヒトにおいても店頭の野菜などで選ぶ人は多いよね。

 

人工肥料や人工殺虫剤を使わず、遺伝子組み換えでなく、有機農法で、といった感じかな。

 

ただし、実際に農家の方なら分かるかと思うけれど、家庭菜園ならともかく、商業用に「ありのまま」で作物を育てることはできない。

 

そこで「天然」の肥料や「有機的な」農薬は不可欠なんだけど、それが果たして化学合成されたものと比べて安全なのか、ひいては「体に良いのか」についての関連性は極めて低い。

 

そもそも農薬で言えば、化学合成であるか有機であるかは本質ではなく、それにさらされる濃度と期間が、いわゆる「毒性」を決める。

 

また、遺伝子組み換え品については、日本では字面から必要以上に忌避する人もいるけれど、こちらも有害であると決定づけるような信頼性のある根拠は、未だ存在しない。

 

さらにオーガニックで作られた作物は、いわゆる抗酸化物質が多く含まれ栄養価が高いとも言われるよね。

 

これについてはかなり議論の分かれるところで、オーガニックであるから高栄養であるかは一概に言えず、変わる、むしろ何ら変わらないというデータが混在している。

 

また、オーガニック農法は環境に良くエコなのでないか、という話もある。

 

これは一体何を環境に良いと定義するかによるんだけど、例えば温室効果ガスの排出量は化学農法とほぼ変わらず。

 

むしろ農作効率の関係上、オーガニックの方がより広い土地が必要となってしまうので、それが果たして自然で、環境に良いのかは疑問だよね。

 

つまり総合するとオーガニックを選ぶのは、気分の差、誤差の範囲。

またはっきり言えば、現状かなり界隈の「イデオロギー」的な目的も絡んでいて、問題をややこしくしている。

 

通常の物より多少値が張っても、それでより満足感を得られるのであれば、もちろんそれを選択すればよいと思うし、逆にあえて無理して選択し、経済的に苦しむ必要はないでしょう。

 

個人的には、どちらかに偏ることなく両方バランスよく選択することによって、「良いとこ取り」できるのではないかと思うよ。

 

「由来」の思い込み

天然の植物由来だから安心――

 

こういったキャッチフレーズは、いまやペットフードのみならず、生活の中のありとあらゆるところで見聞きするようになってしまった。

 

しかし残念ながら科学として、由来が何か、は正直あまり関係がない。

 

ここではイメージしやすいビタミンCを例に挙げてみよう。

 

フルーツから抽出したビタミンCと、化学合成されたビタミンCは一体何が違うでしょうか?

 

答えはどちらも全く同じもの。

もっと言えば、どちらもビタミンCという名の「化学物質」。

 

これがヒトどころかペットの体内に入ったところで、作用は何も変わらない。

 

もし何か違いがある!と言うのであれば、その違いとして未知の機序を科学として明示しなければならない。

 

また、主観を除いても尚、もし明確に作用に違いがあったとしたら、それは別の成分=不純物が混ざっているからにすぎないでしょうよ。

 

であれば、それは作用に対して影響を与えているのは由来がどうこうという点は本質ではなく、むしろその不純物のせい。

 

なおその観点で言えば、植物から抽出した方がかえって、よく分からない不純物が混じってしまうことも十分あり得るとも言える。

 

ちなみに保存料も着色料も、化学物質で添加物だから良くない、という話が主に語られるけれど、これも天然だから毒性が有る無しということでなく、含まれる「成分」がどうか?だよね。

 

加えて、保存料に関して言えば、仮に合成保存料が入っていなくとも、品質を保つために酸化を防いだり、防腐効果を持つ成分は当然使われていたりする。

 

それが「本当に安全か」は、植物由来かどうかなどとは一切関係ない。

 

また、それすら入っていなければ、消費期限はもちろん保管環境に気を使わなければならない商品となるだけの話。

 

さて、ではなぜ、そういった安心安全的なフレーズをメーカーは商品パッケージに記載するのか。

 

それはごく単純に「売れるから」にすぎない。少しでも他社とは違った何かを得たい、という顧客を訴求するから使用するだけ。

 

もちろんメーカーが持っている独自データでは、「安全」に何らか根拠があるのかもしれないけれど、少なくとも「安全安心」と「由来」との関連性を、科学で語ること自体がナンセンスなわけよ。

 

「添加物」問題

添加物で発がん性云々の話はペットのみならず、ヒトでも多く語られるよね。

 

これを一つ一つの成分ごと語っていくと、ものすごい膨大な話になってしまうので、この項ではポイントだけ端的にするよ。

 

大抵のキケン論の場合、実験や調査の前提となる条件に疑義があるなど、きわめて限定的な使用環境下のケース、もしくは「量」や「期間」の概念を度外視しているケース、あるいはごくごく僅少なサンプル数であるケース、などが挙げられる。

 

または、因果と相関の取り違え、もあるだろう。

これは例えば、以下の通り。

 

健康な男女5人ずつが、塩おにぎり100gを同時に食べた。すると翌日、男性は全員風邪をひき、女性は皆いつも通りだった。

 

さてこの結果から、塩おにぎりは男性に風邪を引き起こす――

 

とはならないし、塩がヒト免疫を狂わせる可能性――ともならない。

ましてや、女性は塩おにぎりの摂取許容量が100g以上である――ともならないよね。

 

おそらく研究者が、説得的な根拠をもってこういった類いのことを論文として仕上げることは可能でしょう。大抵こういうこと。

 

なお、もちろん塩分の摂り過ぎは、ヒトにおいて健康を害するから、リスクがゼロではない。

 

今まで平気でも、明日突然ぽっくり逝ってしまうかもしれない。けれどリスクがあるのに、今日も塩分の入ったおかずと共にご飯を食べているはず。

 

もちろん一切のリスクを許容しないゼロリスク信奉者は余計な食塩など口にしないのだほうが、絶対に「塩」(しお、ではなく、えん)は誰もが摂っている。

 

つまり添加物キケン論の多くは、有り余るメリットを一切無視し、量の概念を無視した、針小棒大にリスクを語る話全般のこと。

 

それでも、世界中の研究者から○○は有害だと言うデータがある!といった反論がしばしばあるけれど、では無害vs有害はどちらが優勢かという点と、研究者というものは論文を書くのも仕事だからそういうものだ、という話。

 

そもそも論文とは、ある根拠をもって何かを主張し、自説の証明を目指すことが目的なのだから、別に宇宙の真理を解き明かす大論文でなくとも、塩おにぎりの有害性についてでも良いわけよ。

 

「本来は」の功罪

イヌやネコなどで、本来○○な生き物だから、という言い回しを目にしたことは無いだろうか。

 

これはある種の誤解をはらみ、過大に気にされ過ぎていることが否めない。

 

例えば、ネコは本来肉食だから、本来祖先は砂漠生まれだから、などと言われる。

 

だからと言って、イコールでエサは肉が一番良いのだ、水はそれほど要らないのだ、とは直結しないはずだよね。

 

「本来は」を抜きに、正確に語ると以下のようになる。

 

ネコはタンパク質が主なエネルギー源であるから、必要分のタンパク質を適切に取る必要がある。

ネコは摂取水分が少なくとも体が機能するが、尿路結石や腎疾患予防のためにはこの限りではない――

 

「本来は」に頼りすぎると、本質を見失うことになるわけよ。

 

そもそも砂漠生まれとされる猫が、なぜ歌にもなるほどお魚くわえたドラ猫になるのか。

 

どこの砂漠に主食となるほどの魚が住んでいたというのか。

狩るには水に近づかなければならないが、なぜ水に濡れるのが苦手なのか。

 

さらにキャットフードではよくある、チキンやラムはまだしも、ターキーやビーフやポークを得るために獣を狩る猫がどこにいたのか、ということ。ヤマネコは猟犬ないよね。

 

結局のところ、ネコの健康に肉が一番いいという話ではなく、個々の体格に合った量で、嗜好にあった良質なタンパク質を取りましょうということに過ぎない。

 

なお、ここで言う「良質な」はオーガニックであるかなどとは一切関係なく、ネコが必要とする「アミノ酸価を満たす」という意味。

 

また例えばヒトの起源はアフリカで、むしろ狩猟民族として長く大陸を移動していったわけで、本来氷河期にはマンモスを狩っていたような種だよね。

 

さらにヒトの祖先の小さな哺乳類は、翼竜の卵を盗んだり、巨大恐竜の死肉をかじりつつ、白亜紀後期からの絶滅を乗り切ったことだろう。

 

しかしいまやヒトは、肉好きの偏食はともかく、健康のためには野菜を摂りバランスを保つことがスタンダードとなっているよね。

 

またこの日本では、長らく稲作によってコメを主食にし、肉食など禁忌と言える時期さえあったけれど、戦後は急速に動物性たんぱく質の摂取が増え、食文化が大きく変わり、いまやロカボとしてコメや炭水化物を忌避したりする時代。

 

有史以来、ここまで短期間に食が激変した民族も珍しいと思うが、それでも世界トップクラスの長寿国。

 

つまり現代の生き物にとって「本来」など、実はほとんど関係が無いわけよ。

 

もし猫にその本来を言うのであれば、近年話題になったAIMを活性化させるなど、ネコの本来から大きく逸脱してしまうことになるよね。

 

なぜなら、腎臓病になるからAIMが働いていないのではなく、因果が逆で、最初からAIMが働いていないから腎臓病になるわけよ。

 

たまたまAIMの働きが異常な個体がいるのではなく、ネコが全て最初からAIMが正常に働いていないわけ。

 

にもかかわらず、AIMをフードや治療薬で活性化させてしまったら、一体「本来」はどこへ行くのか。

 

あえてこう意地悪に考えると、本来というコトバを随分と都合よく使いまわしていることが分かると思う。

 

純血統でないなら嗜好は千差万別だし、雑種であっても個体差によって病気のかかりやすさも違う。それを本来というワードで、ネコの生態の複雑さを見て見ぬふりするかのように、ひとくくりにしすぎではないだろうか。コトバをオブラートに包むのも大切だが、同時に本質を見失ってもいけない。

 

結局のところ、ネコやイヌなどだけに無理やり「本来」を適用したがるのは、それだけヒトが愛玩動物として特別扱いし、よく知りたい・もっと納得したいといった願望から来る幻想に過ぎないわけよ。

 

「人間で言うと~」

上記に付け加えて、これはネコやイヌなどの年齢の話だけど。これは科学とは少し外れる項。

 

でも、ここも本質を見失わないようにすべき。

ネコが15歳頃を過ぎシニア期になると、人間でいうと70歳、80歳などと表現されるよね。

 

こういった表現にも、やや疑問を持つべきだと思うわけ。

 

例えば、ハツカネズミが1年生きたらシニアと言うだろうか?

カブトムシが冬を越して生きていたらシニアと呼ぶだろうか?

 

否。なのになぜ、犬や猫は例外なのか。それらの境界線はどこなのか。

 

もし真にヒト基準に置き換えるとすれば、おじいちゃん猫・おばあちゃん猫というネコの15歳は、文字通り15年しか生きていないまだまだ子供なはず。

 

だからこそ、ネコがたった20年も生きられず亡くなってしまった時、まるで我が子のように、あんなに哀しくなるのではないだろうか?

 

もし20歳のネコは「ヒトなら」100歳近く、もう文句なしの大往生なはずだ。

 

なのに、飼い主である大の大人が、100歳の後期高齢者の最期にむかって、なぜわんわん泣いてしまうのか。

 

「ヒトの年齢なら」に置き換えて過ごしてしまうと、ペットが病に弱っていくとき、頭では分かっている「シニア猫」と、現実に過ごした、たった「○○年間」のギャップに必要以上に苦しめられてしまう。

 

もしたった10年、20年の一生ならば、もっと何かできたのではないか?

もっと違った過ごし方があったのではないか?と後悔が生まれる。

 

もちろん、生き物の死に対して、悲しみや後悔がゼロになるとは思わない。

フードを各年齢に合わせて、いわゆる「シニア用」に移行していくことも当然でしょう。

 

けれど、一つの提案です。「人間の年齢に換算すると」を今日から辞めてみませんか。

 

今後様々な研究や医学の発展によって、ネコが30歳まで生きる日が来たとして、それは「ヒトで言うと」100歳を軽く超えるという意味ではなく、30年間というかけがえのない時間という意味だ。

 

見方を今までとほんの少し変えてみるだけで、また違った視点を持ってペットと過ごせるのではないかと思う。

 

「認証」や「認定」の誤解

さて、最後にプレミアム系フードでよくある「○○(機関)認証」「○○の基準をクリア」などといったフレーズについて。

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これはネット上で揶揄される、いわゆる「モンドセレクション金賞受賞」のような感覚で、どうしてもヒトは権威がありそうなものには弱いけど、実際によく知らないと惑わされることもあるので注意が必要、というお話。

 

ここではあえて個別のフードに対してではなく、例として、よく目にするけれど実際意外と中身を知らない「AAFCO」と「FEDIAF」について紹介しておこう。

 

それを通して、各々が愛用するフードの「基準」とされている機関についても、下記に挙げるような点をよく調べてみてほしい。

 

まずAAFCO。米国飼料検査官協会。
日本でもペットフードの総合栄養食はすべて、このロゴや表記があると思う。

 

これがあると、例えばアジア産のフードでもあぁ安心、となる人もいるけれど、あくまでも最低限の栄養基準値や、製造者としての表示ルールを定めているに過ぎないんだよね。

 

つまり、フードの検査も認定も、一切行っていない。

なので仮に、AAFCO「合格」とかAAFCO「認証」という表記があったら、不正確というかウソ。

 

そして単にガイドラインを決めているだけなので、破ったら何か罰則を与えたりするような権力があるわけでもない。

(もちろん国などが規制し、事実上のスタンダードであるAAFCOの基準を満たしていないという理由で、メーカーに指導することは可能でしょう)

 

そのため、例えば本当に成分や原材料が表記通りか、は分からないわけよ。

 

なお日本ではさらに、ペットフード公正取引協議会が基準を定めているけれど、基本的にはAAFCOに準拠しており、同じく罰則があるわけではない。

※ただし2009年施行のペットフード安全法では、農薬などの上限値を定め、メーカーへの立ち入り検査や罰則を科すことが可能になった。

この点のみを考えてしまうと、意外に舶来のプレミアムフードより、国産品の方が安心に感じるかもしれない。

 

次にFEDIAF。欧州ペットフード工業連合会。

その名の通りヨーロッパの機関で、プレミアムフードが多い欧州産を愛用するかたにはお馴染みかな。

 

ただこちらも誤解しがちなんだけど、AAFCO同様に基準を定めているのみで、フードの検査や認定は一切行っていない。

 

とはいえ製造工場に関しては認定を与えているから、フードの実際の中身はどうか分からなくても、工場だけは一応マトモなところで作ってる、ということは分かるわけ。

 

作っている環境が良ければまぁいい、となりがちだけど、更に少しややこしい問題があり、実は原材料の表記に関してはAAFCOに比べてFEDIAFは比較的緩いんだよね。

 

例えば、ナチュラルフードファンが忌避しがちな「ミール」系は、七面鳥原料ならAAFCOではターキーミールと明記しなければならないけど、FEDIAFでは乾燥ターキーなどと表記しても良いわけよ。

 

つまり米国基準AAFCOのフードと、欧州基準FEDIAFのフードは、良い悪いの単純比較がそもそも難しい、ということ。

 

これら2大メジャー以外でも、世界ではペットフードに関して活動している機関はある。

 

果たして自身が愛用しているフードは一体どういった機関の基準を採用しているのか、そしてそれはどういったルールなのか、また本当に「認証」や「合格」なのか、色々と調べてみますと面白いことが分かると思うよ。

 

寄稿者:rai