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【獣医師監修】「ネコの腎臓病対策」サプリやフード、健康情報のウソホント

獣医療の発達に伴い、ペットも高齢化が増えてきました。高齢の猫で多い慢性腎臓病は一度かかると治ることはありません。

 

進行を遅らせる為・腎臓に負担を与えないようにするにはサプリや食事療法が大切だといわれていますが、多くの製品・フードがでているのでどれがいいのか分からないこともあると思います。

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この記事では猫の腎臓病に対して、良いもの・避けた方がいいものを解説させていただきます。

猫の腎臓病で制限したほうがいいもの

リン

腎臓病において制限した方がいい成分として最も重要なものがリンです。

腎臓病になると体内に必要な物質を上手く吸収できない・体外に排泄すべき物質を排泄できないという状態になります。

 

もちろんリン自体は骨や体の成長に必要な物質なのですが、腎臓病になると体内に過剰に蓄積してしまいさらなる腎臓病の悪化につながります。

 

腎臓病において、リンを制限した療法食を与えた猫は与えなかった猫より3倍長生きすることができたという研究結果もあり、多くの腎臓病の療法食ではリンが制限されています。

 

猫の腎臓病で場合によっては制限した方がいいもの

塩分(ナトリウム)

塩分の過剰摂取は人では高血圧につながります。

しかしながら猫の場合はおしっこにナトリウムを排泄する能力が高いため、健康な子~初期の腎臓病では制限する必要がないと言われています。

 

ただし、腎臓病が進行してきた場合はこの排泄する能力も落ちてくるので制限しなければいけません。

注意してほしいのは人の食べ物を与えないことです。健康な子に一般的なキャットフードを与えている場合は問題にはなりませんが、人間の食べ物は猫にとって塩分が高めになってしまいます。

 

喜ぶからと言って人の鯖缶やかつおぶしを与えるのはやめましょうね。

 

タンパク質

腎臓病の子は血液検査でBUN(尿素窒素)という物質が上がってきます。このBUNはタンパク質を元に作られるので、昔は腎臓病になったらすぐに低タンパク食にするべきだと言われていました。

 

しかしながら、猫は肉食動物でありエネルギー源のメインはタンパク質です。タンパク質を制限しすぎると体重や筋力の低下につながり結果的に体力が低下してしまいます。

 

よって最近の考え方では、初期の腎臓病においてはタンパク制限はあまり必要でないと言われています。

 

猫の腎臓病で推奨されるサプリ・成分

サプリはあくまで「健康補助食品」です。サプリだけで進行した腎臓病に効果がでるわけではありませんので、獣医師が支持する治療(皮下点滴、薬、療法食)と合わせて補助的に行うようにしてください。

 

リン吸着剤

先ほど述べたように、体のリンが高くなると腎臓病を悪化させます。腎臓病サプリとして多く出回っているメインの成分になります。

 

ただし、この成分はあくまで食事中のリンを吸着させ吸収されにくくするものですので食事と一緒に与えないと意味がありませんので気を付けてください。

様々な成分を使った製品がでていますが、成分によっては便秘または下痢になる子もいますので自分の子にあったものを選びましょう。

 

アミノ酸製剤、BCAA製剤

最近ではじめた成分です。特定のアミノ酸を補給してあげることで腎臓の機能を助ける、腎臓の修復作用を促すという働きがあります。

 

オメガ酸脂肪酸

猫の腎臓病において血圧を下げる効果や腎臓での血流改善効果があるといわれています。

 

猫の腎臓病で避けてほしいこと

手作り食

しっかりしたペットフード会社が作っている療法食であれば、栄養が偏ることはありません。

 

しかし、飼い主さんが手作り食を作ることで過剰なナトリウム制限・蛋白制限や他の必要な栄養素の不足につながってしまい腎臓病を悪化させてしまいます。

 

手作り食で栄養バランスをしっかりした食事を作ろうと思うと、様々な栄養素・サプリをグラム単位で正確に計算し作らなければいけません。

 

毎日、そのような療法食を作るのは飼い主さんにも負担がかかりますし、できる人はあまりいないと思います。

猫の為にも、飼い主さんの為にもなるべく療法食を与えましょう。

 

飼い主の判断で療法食にする

「血液検査の数値で腎臓の値が少し高かった」「高齢になってきて心配だから」と飼い主さんの判断で療法食にしていませんか?

 

腎臓療法食は万能ではありません。問題ない範囲での数値の上昇であるにも関わらず療法食にしてしまうと、他の病気につながる可能性があります。

 

療法食とは獣医師が必要と判断した時に処方する「治療薬」と同じです。しっかりと獣医師の判断に基づいて与えるようにしてください。

 

もし腎臓療法食を食べなくなってしまったら?

腎臓病が進行すると食欲もおちてきて療法食を食べなくなってしまう状態になってしまうこともあります。

 

よく末期の腎臓病の飼い主さんから「食べが悪くても療法食を与え続けたほうがいいか?」ということ聞かれますが、

食欲がおちる程の段階になってきてしまうのであれば療法食でなくても「食べて体力をつけること」が一番大事ですので、食べるものを与えてあげてください。

 

AIMについて

最新の研究で猫の腎臓病に対して「AIM」という物質が有効なのではないかということがいわれるようになってきました。

 

AIMは腎臓の尿細管という部分にたまる「ゴミ」を取り除く働きがあり、猫においてはこのAIMが機能していないといわれています。

そこでAIMを人為的に投与することで腎臓病を防ぐことができるのではないかといわれています。

 

まだ研究段階であるので製品化には時間がかかると思いますが、近い将来、猫の腎臓病を治せる時代がくるかもしれません。

 

まとめ/獣医師から一言

猫の慢性腎臓病は腎臓の負担を減らして進行を遅らせることが大事です。

様々なサプリ・療法食がでていますが、飼い主さんの自己判断で与えず、なるべくなら獣医師に相談してから与えるようにしてください。

 

ブログ主あとがき

当記事は「みたらし先生」に寄稿いただきました。

 

なお、上記の「AIM」については、東京大学 大学院 医学系研究科 宮崎徹 教授 によって日夜研究が進められており、

まさに今日も腎臓病と闘っている全猫にとって、そしてそれを支える全ての飼い主にとって待望の薬となることが期待されています。

 

※一次情報をいち早くチェックするために、是非ご本人のtwitterアカウントをフォローしておくことをお勧めします。

Toru Miyazaki/宮崎徹 (@Toru51557911) | Twitter

 

この研究は様々な媒体に取り上げられ大きな反響を呼び、現在は寄付も募っています。

腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? | 広報誌「淡青」37号より | 東京大学

 

しかし、2020年から続くいわゆるコロナ禍によって、そのタンパク質製剤の開発や治験、実用化が大きく遅れてしまいました。この間にも、病に力及ばず旅立った猫が少なくないことは残念でなりません。

 

例えば人間の歴史においては今日まで、ガンの夢の特効薬に関する多様な研究成果がニュースに挙がり、そしてそのどれもが臨床段階で消えていき、人類はいまだガンを克服できていません。

 

それはいわゆる試験管から動物、そしてヒトへと順に適用していくにあたって、それぞれの境界に高い壁が存在する難しさ、ということでもあります。

それゆえにヒトのガンにおいても、ネコの腎臓病においても、近年の医療現場では予防医学の観点がより重視されてきました。

 

ですからAIMに対しても、過剰な期待をするべきではないのかもしれません。

しかし少なくともネコの腎臓病克服に対する、これまでにない確かな、大きな一歩であることは間違いないでしょう。

 

あのときAIMで救われた、と元気に過ごせる猫が一匹でも多くなる未来を信じて、私は寄付をしました。

猫を飼う当事者として、そして腎臓病で力尽きる何匹もの猫を見送ってきた中で、この小さな希望の成果を待っています。

宮崎 徹 教授による猫の腎臓病治療薬研究へのご寄付について | 東京大学

 

追記・「AIM30」発売決定

2021年12月30日、上記の宮崎徹氏のtwitterアカウントにてドライフードにAIMを活性化させる成分を配合した「AIM30」(マルカン)が、2022年3月1日に販売される予定であることが発表されました。

Toru Miyazaki/宮崎徹 on Twitter: "腎臓病の治療薬は現在も研究開発に尽力している最中ですが、まずはネコ用のドライフード「AIM30」が、3月1日(予定)にマルカンから発売になることをお知らせします!"

 

承認までの道のりが長い医薬品としてではなく、かねてからタンパク質製剤であるという特徴を生かし、フードとして先行して世に出す考えであることが言及されていました。

世間の大きな期待の声に応えるように、今回実にスピーディな対応をしてくださったことに、まずは感謝の念に堪えません。

 

マルカン(サンライズ)といえば、過去にはゴン太くんの「ほねっこ」がヒットしたように、イヌネコに限らず小動物をはじめとして、生き物全般に対する家庭用ペット用品の総合メーカーというイメージでしたが、

近年ではグレインフリー(穀物不使用)のNaturaHa(ナチュラハ)シリーズを販売し、健康志向のフード関連にも力を入れている国内メーカーです。

ペットのフードと用品の総合メーカー 株式会社マルカン

ペットのフードと用品の総合メーカー マルカン|ペットとの生活をもっと豊かに

サンライズ いつまでも変わらぬ美味しさ|ペットのフードと用品の総合メーカー マルカン

 

実際に、後々登場するであろう医薬品と比較してどの程度効果の差があるのか(効果自体が有意であるか)は続報や経過を待ちたいところですが、少なくとも現時点で腎臓病を抱えているネコと飼い主にとって、全く新しい選択肢の一つとなることは言うまでもありません。

 

追記・一般社団法人AIM医学研究所 設立

宮崎徹氏が2022年3月末にて東京大学を離れ、以降は一般社団法人にて活動することを発表されました。

Toru Miyazaki/宮崎徹 on Twitter: "【ご報告】一般社団法人 AIM 医学研究所設立のお知らせ
皆様のご期待に一刻も早く応えるべく、ネコとヒトのためのAIM創薬など、AIM研究をトータルで大きく加速させるため、AIM医学研究所を発足させます。設立のご報告をhttps://t.co/MF311knPhOに掲載致しましたのでご一読いただけますと幸いです。"

 

略称IAM(アイアム)の代表理事・所長として専任し、研究室のメンバーも現状と変わらずに研究に専念なさるそうです。

ネコのみならず、ヒトのためのAIM創薬などを研究を更にスピーディにするための決断だそうです。

 

また既に東大基金に寄付済みのかたにはメールが来たと思いますが、この発表をもって東大基金におけるAIM研究への寄付は受付終了となりました。

 

今後の研究に対する寄附の受付に関しては、後日IAMから詳細が発表されるようです。

一般社団法人AIM医学研究所 |

 

追記・AIM30ブランドサイト予定

株式会社マルカン様より、AIM30の専用ページが公開予定であることが発表されました。

株式会社マルカン on Twitter: "【多くの愛猫が健康を維持し、長生きすることを願う】

 

2022年1月下旬にサイト公開予定。3月の発売予定には変更はありません。

なお、同時に商品パッケージ画像も発表され、AIM活性化成分としてアミノ酸A-30という記載があります。商品名のAIM30は、この成分名からとられていることが推察されます。

 

また「腎臓の健康維持フード」ということで、療法食ではなく普通食であることが明らかになりました。


この点で懸念となってくるのは2点。

療法食ではないという明記があることによって、オークションやフリマサイトの出品禁止カテゴリを現状外れてしまいますので、いわゆる転売をどのように防止するか。

そして、既に療法食フェーズにある猫にとって、適したリンやナトリウム含有量の基準になっている商品かどうか、です。

 

前者に関しては各小売店などの適切な対応が期待されますが、後者に関してはメーカー公式サイトの続報を待つことになります。

 

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