四方山話シリーズ。
この日本国内で、アンパンマンというものを見たことも聞いたこともない人はいないのではないか、というレベルのやなせたかし氏が描いた至高のヒーロー。
いつの時代においても、それこそ老若男女問わず魅力を感じさせる部分は一体何なのか、考えてみた。
自己犠牲の精神とカニバリズム
アンパンマンは基本的に見返りを求めない。というよりもむしろすすんで自らの顔(アンパン)をお腹が減った人に差し出している。
これは原作者のやなせたかし氏の戦時中の経験から「飢えを救ってくれる者こそ究極の正義のヒーロー」であるという考えに基づく。
そして当のアンパンマンはそれに関して、自己犠牲だとはまったく思っていない。というか犠牲を犠牲とすら思っていない。
否、犠牲という文字はおそらくアンパンマンの辞書にはない。誰かを助けるために、むしろ自然に本能として行っている行為なのだ。
ただしこれに関して、ホントか嘘か、どうも一部の海外の人にとってはウケが良くない、という意見もあるらしい。
自分の顔をちぎって食べさせる、という行為が残酷でカニバリズムを連想させるとかなんとか。。
とはいえ逆に、そこまでしてでも誰かを救いたい、というのはまさしくアンパンマンが真の正義の心を持ったヒーローであることの裏返しである。
愛と優しさ、勇気こそ強さである
テーマソングの「愛と勇気だけが友達さー」の歌詞のように、アンパンマンは誰に対しても特別扱いすることなく、平等で優しい。それは宿敵であるばいきんまんに対しても、だ。
ばいきんまんが働く悪事をやめさせようとしているのであって、決してばいきんまん自体を亡き者にしたいわけではない。
そして同時に特定の誰かだけを愛することも無い。アンパンマンはみんな全員が、街自体が、そして自然が大好きなのだ。まさに博愛の精神である。
そしてその精神から湧き出すのが、決め台詞でおなじみの「元気100倍アンパンマン」だ。
ちなみにあまり知られていないが、この強化版・上位版である「元気300倍」および「勇気100倍」などの形態も存在する。
もっとも、アンパンマンガチ勢※によればスターライトアンパンチが最強技であるとされている。劇中最強の呼び声高い、小惑星デビルスターを一撃で粉砕したからだ。
愛と優しさを極め、勇気を持てば、頭がアンパンであったとしても惑星破壊レベルのことがいとも簡単にできるのである。
誰しも幼いころに持っていたはずの心のヒーロー。大人になるにつれて荒んでいってしまった「勇気」を、この機会にアンパンマンから思い出してみてはいかがだろうか。
※なおガチ勢とは……特定の作品などに対して本気の姿勢で向き合い、非常にコアな知識を持つ人たちのこと。幼児向けと思われるアンパンマンはもちろん、しまじろうやおかあさんといっしょにもガチ勢は存在する。