近年ペットへの健康配慮が進んだことに伴って、以前に比べてとても長く共に過ごすことができるようになった。一生のパートナーであると言っても決して過言ではないだろう。
ただしその反面、長寿化=高齢化によって避けられないのが病気だ。この点はヒトと同様で、様々な慢性疾患を抱えるペットも少なくない。
猫や犬が病気になってしまった際、やはり病院で正しい診察を受け、適切な治療を受けることが大切だ。
しかし、動物病院はいわゆる「高い」というイメージあると思う。
一度もクリニックのお世話にならず天寿を全うできることは幸運なことだが、ペットが高齢化した現代では、いまやなくてはならない存在と言えるだろう。ここでは、そんな動物病院について解説する。
なぜ料金が高額なのか
はじめに、結論として端的に言ってしまうと、動物病院が高いのは自由診療であることが主な理由。
どうしても医療という分野が高額だと、医師や病院が不当に儲けている、という先入観を持ちがちですがそれは大きな誤解だ。
例えば日本では人が病院にかかる際はほぼ全員、保険診療によって3割負担以下で良質な処置を受けることが出来る。つまりあくまでもこの国の国民皆保険制度が優秀過ぎるだけなのだ。
一方でペットには、ヒトで言うところの保険診療は無く、何らかの公的な扶助も補助もない。そしてそれを後押しするような法律自体も日本には存在しないのだ。
相場はどのくらいなのか
地域差がかなりあり、同じ診療であってもピンキリだ。これはスーパーマーケットの話として置き換えて考えてみると自明。
基本的に周囲に動物病院がない土地などでは、価格競争の原理は働かないのだ。
とはいえ医療においては、スーパーと違って安ければ安い方がいいというものでもないので、そのクリニックとして適正な治療レベルを維持するために、各価格設定がなされている。
ある程度の目安を言うならば、薬代や簡単な検査や処置、診察に関しては、おおよそヒトの場合と1ケタ違う、と考えておくのが良いだろう。
つまり、ヒトで数百円で済む薬代は、数倍の数千円単位にもなるということ。なおイヌやネコに使用されるほぼ大部分の薬は、ヒトで処方されるものが転用されている。
しかしペットの個々の症状や体格などによって、適切な薬や用量は千差万別。また、ヒトでは無害な薬が、ペットには致命的な毒性を持つものもある。
なので、高いからという理由で病院に行かず自己判断によって、ヒトの薬を安易に使用することは絶対にやめよう。
自由診療の価格はどう決まるのか
自由診療と名前が付いているのであれば、安くするのも高くするのも自由な気がしてしまう。
確かに誰もが抱くそのイメージ通り、実際に安価なクリニックも存在するし、腕の良い獣医師や、有名な病院であれば高額なクリニックも存在する。
大体の動物病院では、獣医師は多くとも数名程度の少数精鋭が在籍しているだけで、むしろ小さなクリニックであれば獣医一人で経営している場合がほとんどだろう。
その場合、価格を決めるのはその獣医なわけだが、単独で自由に判断しているというよりは、近隣地域の動物病院とのバランスや、自身が研修時代に在籍していたクリニックの価格などを参考にして考えられているようだ。
また薬価や尿検査、血液検査などにおいては「原価」はある程度決まっているので、それを元に診療レベルや病院のクオリティ維持のための価格は自動的に算出される。
なお、例えば胃カメラのような内視鏡など、元々高額な設備が必要なものについては、導入にかかった設備費が今後どのくらいで、いわゆる「ペイ」できるかが考慮されている。
そのため、前項では動物病院の価格はヒトとおよそ1ケタ違うと述べたが、例えばヒトで1万の内視鏡がペットで10万になるかと言うとそうでもなく、数万円程度で落ち着くようだ。
いわゆる「ペット保険」は入るべきか
ペットの高齢化に伴い、各保険会社がペット保険サービスを扱うのが当たり前になってきた。
先述の通り、動物病院での治療は高額だし、例えば難しい手術を伴う入院などになってしまうと数十万円の出費さえも避けられない。
それを考えて、昨今ではペット保険に入る人も多くなってきた様子。
ただし、いわゆる「掛け捨て」タイプになるわけだが、当然ながらペットが何ら病気になることがなければ、保険料は全て無駄になってしまう。
また基本的にはヒトと同様に、ペットも病気がちになってくるのは高齢さしかかってからだろう。
かといって、高齢になってから良い保障内容で新たに入れる保険は現状ほぼない。
そのため、あえて若いうちから保険には入らず、将来のために個人的に積み立て貯金などしておくという選択をするひともいるようだ。
また、ペットとひとくくりに言っても、ネコとイヌでは若干判断基準が異なってくる。
一昔前では猫は家の中と外を自由に行き来したり、犬は屋外の犬小屋で飼うのがほとんどだったと思うが、現代では必ずしもそうではない。
しかし猫が放し飼いされず急性の感染症にかかりずらくなった反面、室外犬では散歩という外せない習慣がある。
つまり、猫ではいわゆる慢性疾患が、犬では外での事故や感染症などのリスクが存在するのだ。
ただし、ペット保険で慢性疾患はまずカバーされないので、猫より犬を飼っているひとの方が、保険に入る場合が多いようだ。
高くて払えないときは
まず大前提として、病院にかかったからには料金を払うことが当然なので、事前にその病院について調べて問い合わせたり、処置を受ける前に直接獣医に聞いておくことは欠かせない。
さすがに飼い主への確認もせず、いきなり高額な処置を施すことは無いと思うが、それでも急病などで突発的に動物病院にかかることになってしまい、手持ちが無い、ということもありえる。
そこで基本的に動物病院では、クレジットカードでの決済に対応していることがほとんどだ。
また、どうしてもの場合は、いわゆる後払いや分割払いの相談に乗ってくれることもあるだろう。
ちなみに個々の経済事情や獣医との関係性によっては、例えば診察代を少しオマケして値引いてくれる場合もあるようだ。
ただしそれはあくまでも公ではなく完全に善意で行ってくれていることなので、やはりペットを飼っている責任がある以上、事前に知っておく・用意しておくということが必須なのだ。
動物病院との信頼関係が大切
動物病院にできるだけかかることがないように、ひいては病気になることがないように、昨今では予防医学的な観点でペットの健康管理をすることが当たり前になってきた。
以前は「ねこまんま」がごく普通だった猫も、いまや高品質なフードで日々飼われていることがほとんどだ。
しかしどんなに健康に気遣っても、生き物である以上、突然の病は避けることはできない。また、急遽そのときになってから動物病院を探す、というのはなかなかに難しいものだ。
そのためヒトでも同じことが言えるが、常日頃から定期的に検査や診察を受けられる顔なじみのかかつけ獣医を持っておくことも大切だろう。
もしもいち早く病気を見つけることが出来れば、その後にかかってくる治療費も大きく違い、安く済むのこともある。
当然ながらペットは、ヒトのように言葉を話すことが出来ないので、それを真摯に汲み取って専門的に適切な処置を施してくれる医師という存在は、飼い主以上に重要とも言える。
もちろんペット自身との相性であったり、貴方との相性もあるだろうから、一度病院にかかってみなければ分からない。
場合によっては、どうしても好きになれない動物病院や獣医もいるだろう。
また、症状はあまり改善せずに治療費だけがかさむ、ということもある。これらはヒトの病院でも良く話。
しかし少なくとも全ての獣医師は、動物を愛していたり、動物を救いたいという気持ちから、獣医を志したはずだ。
飼い主の貴方が愛するペットを任せられる医師は、必ずいる。
だからこそ、事前に信頼のおける動物病院を探しておく、そしてもしもの時のために関係性を築いておくことが必要なのだ。
寄稿者:rai