よつまお

過去ログ倉庫を兼ねたライフログ的な雑記ブログ。記事ジャンルにこだわることなく、不定期更新でゆるゆる運営しています。

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かんどうのうた

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Self Review

文芸コンペ用の超短エッセイおよびリライト協力。

一篇は私の過去作品のリライト、もう一篇は前回協力に引き続き私のオリジナルではない。

 

オリジナル……

ほぼ原文通りといったところで、文字数的に多少のアレンジをしただけにとどめた。

 

私の中では個人的に傑作に近く、これらを超える文章は当分書けないと思っているし、そしてこれがクオリティとして常に目指すところなのである。

感動・感謝、という分野においては非常にありがちな題材ではあるが、逆に経験者としては、これ以上のものは未だこの世に存在しない、あるいは私からは提供できないというのが悩ましいところだ。

 

リライト……

今回の場合は、ある程度のインタビューを行いつつ、箇条書きに近いものからの文章化となった。

そのため、やり取りの中で少しずつ形作っていったのだが、どうしても私の文体が出てしまっている。

 

作者の感性としては非常に美しく、それでいて繊細であるのは言うまでもない。

その持ち味を、タイトなスケジュールの中で私自身が十分に生かしてあげられていないのが、今回の心残りである。

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  ★名も無きマイヒーロー

 

 二十七歳の夏、暗い暗い漆黒の、底なし沼にいた私は、ある人の話を聞く。

 

 ――私の父も、十年前に癌で他界しました。私も会社では毎日忙しく、一番ストレスの多い時期に失意のどん底に突き落とされました。仕事が手に付かず、失敗も増え……。

 

 それまでは父のことを煩わしい、と感じた日もあります。しかし父がいなくなってからは、何か心に大きな穴が開きました。自然に涙が溢れ、これからどう生きていけばいいんだ……と。当時四十四の一人前の男ですらです。

 

 私も長男で、父から大切に育てられ甘やかされてきたところもありますが、父のことが大好きでした。亡くなってからの方が、そのことを強く再認識させられます。

 

 今、十年が過ぎようとしていますが、一人になるとまだ父のことを思い出し、目頭を熱くすることもあります。結局私自身が死ぬまで、その感情は変わらないのでしょう。

 

 その辺の道行く人もみんな一人になったら、何かしら悲しみや悩みを持っていると思います。楽しく見える人ほど、笑顔という服を着ているかもしれません。

 

 力強く生きていくほかないのです。生きるために生まれてきた。親に生んでもらった以上、生き抜いていくことがご恩返しなのだと思います。父もそのまた父も……同じようにしてきたはずです。私も生き抜いてみせます。お互いに頑張りましょう。

 

 ――私を元気づけるわけでもなく、同情するわけでもなく、ただただ同じ感情を共有できる人生の先輩として、ご自身の体験を話して頂いたこと。私は確かに貴方に救われたのです。

 

 貴方の言葉に触れて以来、今度は私が誰かの心を救いたいと強く思うようになりました。未だに直接感謝を伝えられていないのが残念ですが、いま私は文芸を試行錯誤する毎日です。

 

 いつかどこかで、私の紡いだ文章が貴方の目に触れることを、切に願っています。

 

 

  ★リライト

 

 

 覚えていてくれてありがとう。今でも変わらずにそう思える。

 

 

 外に三匹の子猫が捨てられていたあの時。ペット禁止のアパートなのに、大きくなるまでと大家さんに頼み込んだ。二匹は里親さんがすぐに見つかり、残るは一匹。

 

 

 そしてそのままうちにいることになった「エムちゃん」。いつも窓から脱走しては餌だけもらいに来る、という毎日。

 

 

 そんなことを繰り返してたら、いつの間にかお腹が大きくなっていて、出産は家の中で立ち会ったよね。でもその子猫たちの里親さんもまだ決まっていないのに「後は任したよ」とばかりにまた脱走。

 

 

 小学生の頃は、朝の通学班が来るのを皆で待っていたり、近所への買い物にも付いてきて、出てくるとまた一緒に帰ったりしたよね。

 

 

 最後の出産のとき、外にいたエムちゃんは、私が家に入ろうとしたら、ニャーと鳴いて「行かないで」という眼差しをするから、傍でずっとお腹をさすりながらまた立ち会い。

 

 生まれた子猫たちとエムちゃんを、知り合いの方の家に預けながら里親さん探しをして。それもようやく落ち着いた頃には、その知り合いの方がエムちゃんを飼いたいと言ってくれて、そして手術までしてもらって。

 

 

 でも常に脱走してしまいそうになると聞いていたな。うちに戻ってきたいと思っているみたいと。

 

 しばらくしたある日、エムちゃんが危ないとの電話。突然の出来事で急いで病院へ。

 

 

 もう弱りはて、意識もわずかにしか無いのに、私の呼び掛けに応じて私の元に一生懸命こようとしてくれた。もうほとんど動かせない前足を懸命に伸ばして。

 

 

 出逢ってからのわずか五年間。私はたいしたことしてあげられなくて、ごめんね。エムちゃん。

 

 そして、そんな私を最後まで覚えていてくれて、本当にありがとう。