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Self Review
所属同人の指定テーマ作品。
いつかどうしても書きたかった題材をタイミングよく仕上げることができた。
同人誌の刊行ペースが上がる中、それなりに完成度を上げられたと思う。
これも例によって、裏テーマがある。
なぜ人物名をはっきり示さないのか、呼称はなぜこれなのか。
それを上手く読み取ってもらうには、まだまだ表現力が足りない。
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よみがえるメロディ
もう十年も前になるだろうか。私は学生。若気の至りでバンド活動をしていた。
扱うものは大抵巷で流行っている音楽が多いのだが、たまには自身で作詞作曲したものを演奏していたこともある。
そんな頃の自宅にて。私は音楽番組を見ていた。あるミュージシャンの歌を聞き、ふと「いい詞だよなぁ」と、つぶやく。
それを聞いていたある人が、「詞に良いも悪いもない。曲の全てを決めるのはメロディだ」とぶっきらぼうに言い放った。
これには当時の私は納得いかなかったのは言うまでもない。自分が作詞をするときはそれこそ命を削って言葉を紡いでいたし、まるで好きな歌手のことまでバカにされたような気分だったのだ。
だが今そのセリフを思い返すとどうだろう。
現在の流行りの楽曲の八割方の内容は恋だの愛だの。そしてそこにお決まりの薄っぺらい“共感性のある”メッセージがつく。
どれを聞いても同じような内容の詞だ。販売成功のカギを握っているのは、結局はメロディラインの耳残りの良さなのだろう。
こんな風に流行歌に対して批判的になってしまったのは、私もくだらない大人の一員になった(年をとった?)ということか。
ここでふと目を閉じてみる。――私が音譜まで思い出せるような曲とはなんだ?
「……ミーレ、ドレミファソー、ミー……」
やはりこれだ。私の家族なら皆、あぁアレね、と思い出してくれることだろう。
私がまだ生まれて間もない頃。姉の所持するオルガンにしかめっ面で向かい、母が作った夕飯も忘れ数時間後、「出来た!」の声とともにある人が披露したものだそうだ。
しかしながら作詞まではされていない。当然だ、この曲は「詞よりメロディ!」と言い切った張本人が作曲したものなのだから。