四方山話シリーズ。
出入国管理法改正案が可決され、事実上の移民受け入れ、いわゆる移民政策の実現へ一歩前進、とも言われている。
ただしこの法案に関しては、あくまでも人手不足を背景として外国人労働者の活用を目的としたものだ。五輪を見据えて不法滞在の管理の側面もあるだろう。
とはいえ一方で、もっと国内の雇用とか若者の賃金にまず先に目を向けろよという指摘もあるわけで、賛否は分かれるところだろう。
だが当然企業は安く人を使いたい
ごくごく当たり前だが、人件費は安くしたいに決まっている。少なくとも、会社の存在意義としては利潤の最大化なわけだから当然だ。極端に言えばタダ同然で働く奴隷が欲しいのだ。
そこで今回のような規制緩和は企業にとっては願っても無いことで、外国人労働者によってコストは間違いなく下がるだろうというのが結論、というか大前提。
ここで私は少し先の未来を想像して思考実験してみる。
例えばこの国が安いコストで雇いたい人々は、中国とか韓国・朝鮮、東南アジアの人々なわけだ。
仮にアジアの人々が日本に出稼ぎにきたとする。するとその国では人手がだんだんと足りなくなる。優秀な人ほど海外に出てしまうからだ。結果その国ではやがて賃金が少しずつ上がる。
それでも人が集まらない場合、その国でも今度は安い外国人労働者を求める。
ここではそれをアフリカとしよう。するとアフリカでは人手がだんだんと足りなくなる、以下ループ。
といった具合に、順番に人手不足、高賃金化が各国で起こっていった場合、最終的に残った「1国」は一体どこの国に労働力を頼ることになるのだろうか?
これはベーシックインカムいわゆるBIでもよく議論される部分だ。将来はAIや機械が労働を担うのだろうか?
私は経済に対して決して明るくはないので、この先が想像できない。もしかすると最後は各国で労働賃金が平均される形(皆が豊か)になるのだろうか。
(この文脈において、賃金がいまより低くなるか高くなるかは論点ではなく、世界でインセンディブが最適化されるという観点であるということを付言しておく。)
だとすれば少なくとも外国から労働力を貰うというのは、全否定するものでなく、WIN-WINな側面もあるように感じる。
流動性の中で必要なのはセーフティネット
国際化の波の中で、移民や外国人労働者の問題は、そうやすやすと避け切れるものでもないのだろう。いやむしろ世界的には「流行り」は過ぎたはずだ。
だか少なくとも、未だデフレから完全回復せず資源も乏しいこの国は、一定程度まで不可避なことなのかもしれない。
ちなみに外国人労働力と同じく経済的な議論で言えば、仮に正社員であっても簡単にクビを切れるようにしたらどうか?というものがある。
なかなか手放しに多数の賛成は得られそうにないが、少なくともコストがネックとなっている企業にとってはありがたい話だろう。
人材の流動性が高まれば、必然的に企業は優秀な人にはより多くのインセンティブを払ってでも確保したくなる。だから能力に見合って正当な報酬が払われるようになるだろう。
ただ当然に労働者にとって突然の解雇は大きなリスクだ。そこで必須となってくるのが、セーフティーネットだ。
例えば端的に言えば、失業保険や生活保護がこれにあたる。
前述のBIもその意味では、セーフティネットの一つとなるかもしれない。このように少なくとも、何かを緩和するならば、代わりに何かが必要になってくる。
マクロ経済には外部性が無い、とはよく言ったものだ。企業はクビを切って終了でも、国はそんなことはできない。
だから掲題の外国人労働者の件、ひいては移民の件も大いに結構であるが、それを行うならば同時に国内で雇用を失うかもしれない人々への保障、
あるいはサービス/製品の品質・治安・文化・人権等々、さまざまなリスクをリストアップし、政策ミックスしてバランスを取ることを期待する。
あえて極論いえば、政府はどこか一方向を向くだけでなく、八方美人になってほしいものだ。