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Self Review
所属同人規定テーマエッセイ。
個人的にはかなり書きにくかったテーマである。
語るべき思い出の中で、人が読んで興味を示すような内容に仕上げることが困難だと判断したのだ。
そのため、メインとなる部分にフィクション的要素も持ってくることで、ようやくまとまりを出すことが出来た作品である。
核となる中盤以外の、序盤と終盤は私自身の考え方が出ていて、私好みの文体になった。
決められたテーマを少し外した視点で書く、ということを意識して、ある程度は差別化出来たのではないかと思っている。
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〜私の初恋〜
奇妙な手紙
初恋とはいつのことだったであろうか。つい最近のようでもあり、遠い昔のようでもある。
恋愛というものは、私にとって常に濃密である。とはいえそれら全てが輝く思い出ではなく、時に忘れたくても忘れられないトラウマを植えつけてくれるものもあれば、未だに人生観に多大な影響を与えて悲哀な気持ちにさせてくれるものも往々に存在する。
その一方、私は「初恋」を思い出せないのだ。
私は以前どこかで書いたように「所持品」は少なければ少ないほど良いと思っている。そのため常に整理整頓を欠かさないわけだが、先日その最中に不思議な手紙を見つけた。
文字としては非常に幼稚な拙いものであるが、内容に関しては今の年齢になった私が読んでも恥ずかしくなるような、実に甘い愛の言葉が囁かれている。それが何枚にもわたってだ。そして肝心の差出人は不明である。
もしやこれは私が貰ったラブレターなのであろうか。これこそ私の初恋なのかもしれない。
だが、手紙を読んでも読んでも、やはりさっぱり何も思い出せないのである。途方に暮れてふと視線を落とす。そこには一枚のCD。
それは私のお気に入りだったであろう歌手のものだ。おもむろに歌詞カードを開く。
――既視感――なるほど――
あの手紙は「歌詞」である。多少のアレンジはされているものの、そのどれもが当時流行したラブソングの詞を用いたものだったのだ。まだ見ぬ大恋愛を夢見ながら、幼き日の私は自分に置き換えて歌詞を綴っていたのだろう。
しかしその結果、私が為したかった恋愛をすることが出来たのかどうかは微妙なところだが。
さて、私はまたもや初恋の手掛かりを失ってしまった。捜索活動は振り出しである。
いや、もしかしたら、きっともしかしたら……私は未だ初恋「それ自体」を探し中なのかもしれない。