よつまお

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私は猫に恋をする

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Self Review

 

文芸賞応募用作品。

実体験を元にしたエッセイを、かなり換骨奪胎して半フィクションに昇華しようと試みた文章。

 

それゆえに、どうしてもまとまりがなく、いまいちオチも尻すぼみになった感がある。

タイトル付けも二転三転した。

 

創作の難しさを再認したが、題材としては非常に楽しめた文章。

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私は猫に恋をする

 

夏。私は一匹の雄猫を飼うことになった。毛色は白黒。名前を小太郎という。

 

私は少女時代からアレルギー持ちで、猫はおろか、動物一匹飼ったことがない。さらに言えば私は猫嫌いの犬派だ。そんな私が、だ。

 

ペットの世話をするということが、正直これ程までに大変なものだとは思わなかった。

 

好みに合わせた餌、いつも気持ちよく過ごしてもらうためのトイレ、ベッド。抜け毛の処理や、部屋の温度の調節。

 

お金と時間がどんどん無くなっていく。しかし、そんな私の苦労を知る由も無く、猫は実に気まぐれだ。構って欲しい時にはとことん甘えるクセに、用が済んだら知らん振り。

 

私はまだ二十代。花の独身にも拘らず、まるで我侭な子供でも育てているような心境だ。

 

しかし、どんな労力を費やしたとしても、可愛いものは可愛い。ぱっとしない毎日に華が咲くとはまさにこのことだろう。帰宅後や休日に一緒に過ごすひと時の癒し。

 

思い返せば不思議な出会いだった。

 

当時小太郎は捨て猫。とは言っても、周辺ではわりと有名な野良猫で、通りかかる人に文字通り猫撫で声で餌をねだって日々を生きていた。しかもキレイな女の人にだけ可愛い自分を見せる。猫の癖に面食いの女好きということか。

 

夕立が激しいある日。私はその猫の縄張りのガード下に通りかかった。いつも私に対しては何の関心も見せないのに、その日に限って可愛い声で鳴きついてきていた。

 

いま思えば、そこで立ち止まってしまったのが運命の分かれ道だったかもしれない。

 

大雨をしのぐことが出来ず、ずぶ濡れになって私にくっついてくる猫のことを、不覚にも可愛いと思ってしまったのだ。

 

その日、私は迷うことなく自室へ小太郎を持ち帰った。ちなみに私が住むアパートはペット厳禁だ。

 

しかし、そんなことは関係ない。恋する乙女はどんな障害も気にはしないものだ。このときから私と小太郎の同棲生活が始まった。

 

そんな夏が過ぎ、秋。突然小太郎がいなくなってしまった。

 

原因はちょっとした油断だ。心地よい秋風を浴びるために、部屋の窓を開けていたのがいけなかったのだ。ほんの少し目を放した隙に、小太郎は消えていた。

 

待てど暮らせど小太郎は帰ってこない。

 

猫は家に懐くというが、まるで戻ってくる気配が無いのだ。ここが気に入らなくなってしまったのが。

 

私は街へ小太郎を探しに出た。真っ先に向かったのは、小太郎と出会ったあの場所。

 

そこに小太郎はいた。しかし、同時に小太郎そっくりの子猫も一匹。そしてさらに一人の女性と仲良く遊んでいた。

 

私は意を決してその女の人に話しかける。

 

実は、小太郎は飼い猫だったのだ。ずっとその女性と暮らしていて、同じくその人に飼われていた雌猫との間に、子猫が生まれた。そんなときに小太郎は逃げ出したのだそうだ。いわゆる育児放棄というやつか。

 

いくら私がつい昨日まで飼っていたとしても、元々小太郎は人のものだ。その女性に今までのことを伝え、私は潔く身を引いた。

 

その日部屋に帰り、自室を眺める。いたるところに散乱している猫用のオモチャ。壁には小太郎との日々を記録した写真が何枚も飾られている。

 

一人暮らし歴は長いが、こんなにも寂しい気分になったのは久しぶりだ。まさに失恋直後のよう。私はひとりぼっちになった。

 

すっかり猫派になってしまった私はどうすればいいというのか。まったく、最後まで苦労ばっかりかけてくれる。

 

そんな小太郎が私に残していったもの。それは猫への愛情だ。

 

これは、私が小太郎と出会い、一緒に暮らさなければ、元来猫嫌いの私にとって一生手に入らなかったものかもしれない。

 

私が小太郎に抱いていた愛情を、今度は別の猫に向けてあげよう。それが小太郎への恩返しであり、私の幸せのためでもある。

 

私は心機一転、ペット探しを始めた。

 

スーパーや役所の張り紙、果ては知り合いのつてをあたっていたある日、猫の里親募集の新聞広告が目に入る。早速広告主の元を訪れるとそこにいるのは、誰かさんソックリのパンダのような白黒模様の子猫だった。

 

飼い主の女性は私を見るや否や、里親に即決状態。理由は言うまでも無い。ある意味運命なのだ。同じ女性同士、そういった運命的なシチュエーションには弱い。

 

この猫の名前は一目見て決めてある。父猫から字を貰って、その名も「小次郎」だ。

ちなみに、その新しいルームメイトの性別は、メス……だそうだ。